リテール業界でCRMが重要である理由
CRMの基本と取り組みのポイント


ニューノーマル時代において消費者ニーズや行動は大きく変化し、商品やサービスに対する購入意欲や購買方法に大きく影響を及ぼしています。

企業側はそんな消費者ニーズや行動の変化に合わせて柔軟な対応をしていかなければなりません。

このような状況下で、ますます重要性を帯びてくる経営戦略がCRM戦略です。
そのCRM戦略の意味と基本的な考え方、実践時のポイントについて解説します。

 

 

 

 

1.CRM戦略とは

 

CRMの定義と目的

 

CRMとはCustomer Relationship Management(訳:顧客関係管理)の略で、「顧客を適切に識別し、ターゲットとする顧客の満足度と、企業収益の双方を高める為の経営における選択と集中の仕組み」です。
CRMの目的は、限りある経営資源を優先すべきターゲットに投入し、効率的に顧客の満足度を上げ、利益の最大化を目指すことです。

 

なぜCRMが重要なのか

 

現在、新規顧客を獲得し続けることはなかなか難しい状況にあります。

新規の顧客拡大に注力し続けるよりも、獲得した顧客との関係性を見直し、顧客を維持・育成する方策を取らなければ生き残れない時代になっているといえるでしょう。

また、モノがあふれる現代において消費者は様々な商品を自由に選択することが出来ます。

 

多様化する消費者ニーズをいかにとらえ、顧客をつなぎ止めるかが業績拡大の鍵となっています。
そのためには、顧客のことを正しく理解したうえで、顧客の消費行動に応じたコミュニケーションを行っていく必要があります。

 

戦略としてのCRM

 

CRMの基本的なとらえ方は、「売上の内訳を顧客別に識別し、識別した優良顧客を維持・育成・獲得していくことで、経費効率を上げていくこと」です。

まず顧客データの分析を行い、顧客の購買状況を把握し、顧客を金額や購入頻度に応じて区分します。
次に企業戦略を体現する優良顧客の明確化・定義を行います。

そして識別した顧客を中心とした顧客接点を設計します。最適な顧客接点の設計管理により、識別した顧客に対して効果的なプロモーションを行うことが可能になります。

つまりCRM戦略とは、「顧客の識別」によって経営戦略に合致する優良顧客を導き出し、その「優良顧客」の維持・育成・獲得によって、顧客満足と企業収益の双方を向上させる仕組みをつくる「顧客リレーションの構築」であると考えられます。

 

2.リテールにおけるCRMの課題

 

 

消費者行動の変化

 

大前提にCRMはリテールのみならず、顧客を抱えるあらゆる企業にとって重要なものです。しかし、リテール業界ではその重要性が特に高まります。

消費者が収集出来る情報は急増し、消費者の価値観や行動は日々目まぐるしく変化しています。トレンドは敏感に察知され、流行サイクルはどんどん短くなってきています。
トレンドの影響を受けやすいリテール業界にはとりわけそんな消費者の変化に素早く対応していくことが求めらるといえるでしょう。

また、モノの持たれ方にも変化が起きています。これまでのような「所有」することから「共有」する事へ価値観がシフトしているともいえます。
サービスを皆でシェアするシェアリングエコノミー、定額で自由に使えるサブスクリプションモデルのサービスが代表的です。
これらのサービスが増えてきたことで、人々の「買う」「所有する」という意識が薄まってきています。

顧客接点にも変化が起きています。ECサイトの成長率が高まっており、リアル店舗はものを買う場所から、ショールームへと機能を移しつつあります。
これまでは消費者がリアル店舗に足を運び購入するのが主流でしたが、現在は店舗で商品仕様を確認したのち、ネットでより安く販売しているサイトを探して購入するといったことはよくある行動といえるでしょう。

 

オフライン(店頭)における顧客情報の収集



これらの消費者行動の変化に対応するためには、オンラインとオフラインの双方の発想を持ちながら顧客ニーズに合わせた形で対応し、収益に導く構造の確立が必要です。
ほとんどのリテールでは、オンラインでの顧客情報は取得していても、店頭などオフラインにおいては顧客情報が十分に取得できていません。
ごく一部の購入頻度の高いお客様のみ、顔やお名前が分かったうえで接客やコミュニケーションができており、その他多くの方はどこのどなたか分からないというのが現状ではないでしょうか。
企業はこれまで会員カードの発行や専用アプリなどで顧客情報を取得しようと試みてきましたが、会員カードは保管に課題があり、専用アプリはダウンロードの敷居が高く登録がなかなか進まないのが現状です。

最近ではLINEなどを介してデジタル会員証を発行してスマートフォンに格納しておくなど利便性を高めたものも出てきています。

 

3.CRMに取り組む際の注意点

リテールにおいてCRMが重要なのは、変化の激しい消費者行動を捉えていく必要があるからです。
消費者行動を捉える際に陥りがちな注意点について説明します。

 

 

顧客データが取得できていない、統一できていない

 

CRMに取り組むには、まずは顧客情報をどこまで取得できているかという事が重要です。そのためには情報を取得する仕組みや仕掛けがポイントになります。
とりわけリテールにおいては、前述のように店頭現場での顧客情報収集が課題があることが多いでしょう。

それに加え、同一の顧客が店舗で購入した情報とECサイトで購入した情報が、同じ1人の情報として管理されているかという「1顧客1ID化」も重要となります。
これらが整って初めて、次のステップである有効な分析が可能となります。

 

一部の関係者のみで実施されている

 

CRMは「マーケティング部門」や「店舗」など特定の部門でのみ対応すればよいというものではありません。
全社的に自社にとっての「優良顧客」を定義した上で、顧客の購買前から購買時、購買後のアフターフォローまであらゆる顧客接点において顧客を育成してくための施策を部門横断的に考える必要があるからです。

つまりCRMとは全社戦略のひとつであり、そのため経営幹部はもちろん、社内にいるすべての人がCRMを戦略として理解する必要があります。

 

ツールやシステムに振り回されている

 

CRMはツールを導入する事だと勘違いされているケースがみられます。
CRMのためのツールやシステムは沢山出回っており、便利ではありますが、導入するだけでCRMが完了するわけではありません。

ツールを導入したものの使ってみると必要な機能が不足していたり、カスタマイズに多額の費用が発生したり、機能が多すぎて上手く使いこなせず結果的にCRMがうまくいっていないということはよくあります。
ツールは不要なものではありませんが、導入する際はしっかりと自社の優良顧客像や顧客の維持・育成方法、また社内体制などを考慮し自社に合ったツールを導入することが重要です。

 

 

 

4.CRMへの正しい理解と取り組み方

 

顧客関係の構築と顧客コミュニケーションの最大化

 

CRMを取り入れる際の懸念には「成果が見えるまでに時間がかかること」「成果が見えにくいこと」がよく挙げられます。

CRMは顧客の識別を行い、識別された顧客に正しいアプローチをするため費用対効果の面で必ず成果を上げることが出来ます。
例えば、識別されていない顧客全員に対して同じアプローチをしても思った効果は得にくいでしょう。しかし識別された顧客毎に異なるアプローチを行えば効果を高めることができます。

CRMは顧客関係を構築するものですが、同時に顧客コミュニケーションの効果を最大化するものであります。

 

伴走する専門家の活用

 

CRMは短期的成果を上げることも可能ですが、顧客を育成するという性質上、中長期的な取り組みとなります。

CRMは成果や目標を具体的に見据え、何をすべきかを戦略的に考えないと成果が分かりにくかったり、効果的な施策を実行することが難しかったりする場合があります。
また前述したようにCRMの導入に当たっては、取り組む会社の社員全体でその概念を正しく認識すること、踏むべきステップを正しく踏むこと、達成すべき成果を見誤らないことなど、注意すべき点が多くあります。

CRM戦略をスムーズに導入し、成果につなげていくにはしっかりと伴走してくれる専門家と協力することが近道といえるでしょう。

 

 

CRMコンサルティングの詳細はこちら