ゴルフ練習場のCRM②「魔法のスタンプカード」
最近の私のゴルフ熱に比例して、話が長くなりました。昨日からの続きです。
私が最近足しげく通っているゴルフ練習場では、スタンプカードとプリペイドカードの両方の制度が実施されています。スタンプカードは1回の来場毎に1個スタンプが押され、30個でいっぱいになるタイプのもので、かなり長い道のりといえるでしょう。私はしばらくコースには出ていませんでしたが、練習場には時間が空くと気晴らしに通い続けていました。スタンプカードが半分ぐらい貯まったときに、ふと「30個スタンプが貯まると何があるの?」とフロントの方に伺ってみたのです。すると5,000円のプリペイドカード(6,000円相当)がもらえるとのこと。一回の入場料が300円なので、30回通って支払ってきた合計9,000円が3,000円程度に削減されることとなります。「結構お得だな」と思い、それからはスタンプカードをこまめに提出することにしました。
少し話はそれますが、男性の場合、いつも財布にスタンプカードが入っているという人は少ないと思います。「必要なときに必要なスタンプカードを持ってない」・・・そんな経験をしている方もたくさんいるはずです。ゴルフ練習場のスタンプカードやプリペイドカードが比較的高い生存確率を保っているのは、キャディバッグの中に納めておく場合が多いからだと私は思っています。男性的な視点になりますが、財布の厚みを増さないことも重要な要素なのです。
話を元に戻しましょう。だらだらと期間は長かったですが、年明け以降は、あと数個でいっぱいになるスタンプカードを横目に、とにもかくにもせっせと練習に通うようになりました。いよいよ後2個で完了というところで「次回来店されたときに、お名前と住所などの連絡先を書いていただけますか?」と練習場のおじさんに声をかけられました。私の「なぜだろう?」という疑問はあっさり解けました。翌週練習に行くと、受付の別の方が「スタンプカードについて、何か聞いていますか?」と意味ありげな発言をするのです。話を聞いてみると「30個スタンプをすると、名前を印字した新しいスタンプカードが発行される」というのです。
「なーんだ、そんなことか」と思われた方もいらっしゃるでしょう。でもせっせと通い続けた客の気持ちになってみてください。これが何だかすごく嬉しいのです。「ようやくこの練習場から一人前と認められた・・・!」、そんな気持ちになります。私の場合、ドラクエで初めて秘密の呪文を授かったときのような嬉しさを思い出しました。(子供のころに、ドラクエを一作しかやったことしかありませんが) 受付の方はさらに言いました。「誕生日月にはスタンプが2倍になります」と。
本当に、たったそれだけのことでした。しかし、私のゴルフに対する一生懸命さは、それ以降加速しました。家でも素振りをしてみたり、それまでレッスン本なんて読んだこともなかったのにkindleでいろいろとダウンロードをしてみたり。
たった一枚のスタンプカードが、そのゴルフ練習場から私という顧客を捉えて離さないようにしたのです。そのゴルフ練習場は、打席からネットまでの距離もそれほど長くありませんし、設備も古く、特別にきれいな訳ではありません。メリットを考えてみると、家から近いということぐらいでしょうか。それだけでも通うには十分な理由になりますが、実際にはもっと家に近い練習場もあるのです。しかもそちらのほうがが小ぎれいで設備も若干上回っています。でも、私の足は小ぎれいな練習場には向きません。なぜならば・・・それはそのスタンプカードに他ならないのです!
ゴルフ練習場にとって、週1回来店する私という顧客は、優良の一歩手前の優良顧客予備群レベルでしょう。もっと低いレベルかもしれません。しかしネーム入りスタンプカードを手にした私は、その練習場でのレッスンやスクールへの入会、オープンコンペへの参加等といったことまで、すでに検討し始めています。相当高いロイヤルティへと着実に成長しつつあります。
私が練習場の経営者であれば、そういった優良顧客予備群レベルの顧客に対してレッスンプロからの声掛け等の施策を展開しようと考えるでしょう。そうすることで、確実に取り込める売り上げが望めるからです。ゴルフ練習場は、多くの方がひとりで黙々と練習に取り組んでいます。常連同志のコミュニティも少なからず存在しますが、どうすればそういう輪に溶け込んでいけるのか予備群顧客にはよくわかりません。(溶け込みたいかどうかは別ですが)
ある調査によれば、ゴルフ練習場の施設数は年々減少しているそうです。世代交代の波と共にゴルフ練習場の経営環境も大きく様変わりしてきているのではないでしょうか。ゴルフ場には「ホームコース」という表現がありますが、ゴルフ練習場(レンジ)にも、そんな愛着をもった言葉があってもいいはずです。根源的な価値向上をしっかりと行い、必要のない割引施策等を見直したクリエイティブCRMを実践することで、ホームレンジ、マイレンジといいたくなる価値あるゴルフ練習場が増えていくことを愛好者の端くれとして願っています。