「O2O」の留意点
東京の桜は早めの満開の時期を迎えました。温かくなるにつれ、消費行動も活発な時期を迎えます。いよいよ弊社も丸3年を経て、この4月で4期目となります。今後ともよろしくお願いします!
今回は、近頃話題の「O2O(オーツーオー)」について取り上げます。日経テレコン等で「O2O」を検索抽出すると、直近の約1年間(調査期間2012年3月23日~2013年3月18日)で日本経済新聞関連(日経産業・日経MJ含む)紙上にて「O2O」関連の記事が掲載されたのは113回。日本経済新聞はその用語解説を昨年10月23日と今年の3月8日にも掲載させています。それを引用させていただくと、「O2O」とは「オンライン・トゥー・オフラインの略。ネット(オンライン)上で得た情報をもとに実店舗(オフライン)に行き商品やサービスを購入する消費行動を指す。スマートフォン(スマホ)に電子クーポンを配信して来店時に商品価格を割り引いたり、ネット通販のポイントを実店舗でも使えるようにしたりするなどの手法がある」となっています。
最近も3月5日の日本経済新聞の朝刊一面トップで「楽天ポイント、実店舗でも 8100万人会員生かし攻勢」といった記事が掲載されていましたので、「ネット通販のポイントを実店舗でも・・・」といった件などは、記憶に新しいのではないでしょうか。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD0201T_U3A300C1MM8000/
さて、このO2Oの概念自体は、さほど新しいものではなく、従来からこのような取り組みはいろいろと行われていたもので、技術革新により、それらが加速して一般化してきたと理解すればいいでしょう。(それはそれで素晴らしいことだと思います)
例えば、マクドナルドの「かざす」や「見せる」等で有名な「とくするクーポンアプリ」は、2002年から実施されています(当時は携帯サイトのみでしたが・・・)。今やオンラインからオフラインへの誘導施策の代表格としてそのダウンロード数も相当なものです。昨年5月に日本マクドナルドに取材させて頂いた時点で、会員数は3000万人を超えていました。その数は、スマートフォンの普及とともに爆発的な勢いとなってきたのです。しかし、特に目立った広報宣伝活動を行ってきた訳ではありません。先行する顧客の店頭での「かざす」等のアクションを見て、口コミをベースに拡がって行ったのです。日本マクドナルド広報の方が、小職に熱く語って下さいました。「1990年代後半、携帯電話にショートメール機能が搭載されたときに似ている現象かもしれません。それまでは、携帯電話は「耳元に当てて使うもの」でした。それが、ショートメールの登場により「胸の前で向き合って使うもの」へのシフトが行われ、今までの持ち方を抜本的に覆されました。また、そのことがTVCMで大量に広められ、携帯電話は爆発的に売れのです。」
マクドナルドは代表的な事例ですが、このような取り組みは、枚挙に暇がありません。飲食店の方がTwitter等のSNSを利用して、当事者として日々お店の本日のおすすめメニューや空席情報、割引施策情報等を配信していき、ファンになった方々がよりお店に来やすくなる、こうしたことも創意工夫で色々と行われてきています。事例を見るとネットの向こう側にいるお客様を実店舗に呼び込むことばかりに注目が集まりますが、活用方法はそれだけではありません。
例えば顧客が店舗のあるエリアに来ると、自動的に同店で使える割引ポイントを配布するサービス等も稼働中です。また来店時に、スマートフォンに割引情報を配信するサービスもあります。顧客は入店前にスマートフォンの専用アプリを起動させておくだけでOK。それ以外にもLINEなどによるSNS連動タイプもあり、「O2O」はまだまだこれから多様な展開を見せていくことでしょう。
例えば、下記のような事例もあります。
「LINE商店街」へ疾走、1億人突破、低料金で中小店の加盟促す
スマートフォン(スマホ)向け無料通話・チャットアプリ「LINE(ライン)」のユーザー数が18日、開始から1年7カ月で1億人の大台を突破した。運営するNHNジャパン(東京・渋谷)がグローバル化と同時に挑むのが「商店街化」。小規模店が低料金でアカウントを開設でき、ラインを通じて実店舗に顧客を呼び込むインフラに進化するという。スマホのコミュニケーション手段だった「1億人パワー」が、現実の商取引を変えることができるのか。(2013年1月21日日経産業新聞より抜粋)
さて、このように「O2O」は、主に集客を目的とした使われ方が、現在の主軸ですが、その送客されてきたお客様をどのように深化させていくのかについても同時に考えていく必要が出てきます。手前味噌ですが、CRMの重要性は更に増していくという訳ですね。
先ほどの飲食店の事例でいえば、店長やスタッフといったその情報を発信する当事者が、情報を受け取る側のお客様との間で、様々なコミュニケーションも伴っていて信頼感の上に成立している情報だからこそ、人がやってくるということなのだと思います。
「O2O」を上手く活用したい、というのが企業側の本音だと思います。新しい技法で、効率的に集客させることは、誰も否定しないと思います。一方で懸念しなければならないのが、いわゆるクーポンサイト等のようなフラッシュマーケティングとして展開してはいけないということです。フラッシュマーケティングによるクーポン施策は、飲食店等でよく行われていますが、真の顧客を捉えられる施策ではありません。実際に、このような経路で入ってきた顧客のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)等を測定すると、効率は悪かった―――そんな結果を私は何度も見てきました。やりすぎると奈落の底に落ちることさえあるので、やめたほうがいいです。お客様をリピートさせる為にもっとやるべきことは他にあります。
「O2O」を考えるときに、もっとも大切なことはLTVだと私は思っています。脚光を浴びている「O2O」だからといって運営企業自体が主体となって行うものでない限りは、やらないほうがいいと思います。「O2O」支援サービスと銘うって各店舗からお金を取って送客させる仕組みは、単なるマーケティング施策に他なりません。資本的に体力のない商店街の一店舗や、リピーターを望まないといったスタイルのサービス(なんだろう・・・それ)などは利用価値があるかもしれませんが、それに当てはまらない企業は「とにかくやってみよう!」と、そういった仕組みを利用するのではなく、自社でしっかりと行うことをおすすめします。
自社独自の「O2O」を構築する最大のポイントは、識別できる顧客として迎え入れることができるか、どうかだからです。「O2O」は、提供する企業側とお客様を直接的に結ぶ「繋がりの証」なのですから!